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科学報道を見破る10カ条

松永和紀氏は、『メディア・バイアス』の最後で、「科学報道を見破る10カ条」をまとめています。

  1. 懐疑主義を貫き、多様な情報を収集して自分自身で判断する
  2. 「○○を食べれば……」というような単純な情報は排除する
  3. 「危険」「効く」など極端な情報は、まず警戒する
  4. その情報が誰を利するか、考える
  5. 体験談、感情的な訴えには冷静に対処する
  6. 発表された「場」に注目する。学術論文ならば、信頼性は比較的高い
  7. 問題にされている「量」に注目する
  8. 問題にされている事象が発生する条件、とくに人に当てはまるのかを考える
  9. 他のものと比較する目を持つ
  10. 新しい情報に応じて柔軟に考えを変えていく

「危険」「効く」「量」

2と3と7に関しては、「『無添加』『無農薬」は本当に良いものか?」でも触れたとおり、どんなものも量によって毒になったり薬になったり、はたまた毒にも薬にもならないなんでもないものだったりするわけですね。

得をする輩

4に関しては、環境ホルモンの項で述べた「研究費バブル」、不安煽動商法、トランス脂肪酸規制で得をする国々など、いろいろあります。ここは一つ間違えると陰謀論になってしまうので難しいところではあります。

学術論文の信憑性

学究の世界でエラくなるには、NatureやScienceのような一流学術雑誌に論文が載り、なおかつその論文が他の研究者に引用されることです。学術雑誌には毎回大量の論文が投稿されるわけですが、それが掲載されるには、「査読」といって、他の研究者の厳しい目にさらされるので、ハードルが高いのです。

遺伝子組み換え作物は危険?の項で取り上げたロシアの研究者(「科学者」と呼ぶには値しないでしょう)は、学術誌に論文を出すこともせず、学会ですらない、遺伝子組み換え反対のシンポジウムでアジテーションを繰り返していたのです。科学者にはインチキがばれるけど、素人なら誤魔化せるという魂胆でしょう。

では、学会発表は信憑性があるのか、というと、学会というのは、発表だけなら無審査で行えるところが多く、それが査読論文になるまでには高いハードルがあるのです。水に関する話で取り上げた「水のクラスター」説も、日本化学会で発表されたものでしたが、学会発表どまりで否定されたのでした。

人に当てはまるのか

8に関して、ネギやタマネギなど、ユリ科の植物は、犬や猫にとっては猛毒です。合成洗剤叩きの一例として、「台所用合成洗剤でゴキブリが死ぬ、だから危険」というのがありますが、あれは洗剤が昆虫の気門をふさぐからです(マシン油乳剤が殺虫剤として用いられるのも同じ理屈)。フグ毒や貝毒は外部から取り込んだ毒が生体濃縮されたと考えられていますが、フグや貝自身は毒に対して耐性を持っているので、人為的に高濃度の毒を投与でもしない限り、自らが中毒することはありません。ヒトには無害といえるが、ある種の動物には猛毒、あるいはその逆はよくあることです。

柔軟な考え

最後、10に関しては、「合成洗剤は石鹸よりも環境に悪い?」で触れたような一部市民団体の動き、当方ちと腹に据えかねるものがあるので、別にまとめてみることにしましょう。

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