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Q:「ダイエット情報」は信用できるのですか?

A:「本当にこれはいい」という「ダイエット法」があれば、手を変え品を変え次々「ダイエット法」があぶくのように出てくるはずがないでしょう。

魔法のダイエット!?

次から次へと、手を変え品を変え、ナントカダイエットが出てきますね。そういった情報に踊らされる向きに必読の書として、フードファディズムの項で紹介した高橋久仁子・群馬大学教授の著書『「食べもの神話」の落とし穴-巷にはびこるフードファディズム』を挙げておきましょう。なお、高橋氏は"diet"という単語は、食べ物や食事療法を意味するのであって、「痩せる」「痩せるための試みをする」という意味はないということで、「痩身」「減量」という言葉を用いています。

3つに分類

『「食べもの神話」の落とし穴』によると、「運動しないでみるみる痩せる」という食品や情報は、だいたい次の3タイプに分類できるということです。

  1. 摂取エネルギーの不足、食べる量を極端に減らす
  2. 消化・吸収の阻害、食べても食べなかったことにする
  3. エネルギー代謝の促進

1.摂取エネルギーの不足、食べる量を極端に減らす

水飲みダイエットや寒天やコンニャク、野菜やキノコ、リンゴに納豆、朝バナナ。まあぶっちゃけ、空腹をごまかす方便でしかないわけで、それ以上の効果を期待しても無駄、そういった食べ物に、食べるだけでみるみる痩せる成分でも入っていれば、かえって怖いわけですね(笑)。

中国から個人輸入の「痩せるお茶」からよく検出されるフェンフルラミンという食欲抑制剤があります。アメリカではかつて合法医薬品だったが今は禁止、日本では許可されたことはありません。確かにこれを摂れば、「食欲が低下するから痩せられる」のですが。また、麻黄から抽出されるエフェドリンは咳止め薬として用いられますが、副作用として食欲不振をもたらすので、これを逆手にとってサプリメントとして使われており、アメリカではエフェドリンサプリメントによるとみられる死亡例まで報告されて問題になっています。あと、これはいわゆる「健康食品」とは違いますが、痩身効果を期待して覚醒剤に手を出す女性も少なくないようです。

2.消化・吸収の阻害、食べても食べなかったことにする

高橋氏は「必要最小限の食べものさえ得られず飢えで死ぬ人がいる現実をどう考えているのかと、怒りを感ずる宣伝文言」と書いています。

2006年にTBSの番組「ぴーかんバディ!」で取り上げられて健康被害を出した、「白インゲン豆ダイエット」は、この一例です。

白インゲン豆を炒ってご飯にかけて食べると、豆に含まれている「ファセオラミン」なる成分が、ご飯のデンプンの吸収を妨げるという触れ込みでした。ところが、生豆にはレクチンという毒性タンパク質が含まれており、加熱が不十分(被害者が食べた豆は、テレビで使ったものより大きい品種で、テレビで放送されたとおりに炒っても加熱が不十分だったということでした)で中毒を起こしたというものでした。このときは、TBSに対する行政指導にまで発展したのです。

それでは、豆を十分に加熱すればダイエット効果が期待できるのか?というと、レクチンは加熱で失活し、無毒化するけれども、実はファセオラミンもレクチンと同じタンパク質。こちらも加熱することにより失活するので、レクチンだけ無毒化してファセオラミンでダイエット、というのは、通常の調理法では不可能なのです。

一方で、ファセオラミンを抽出したと称するサプリメントが出回っていますが、ファセオラミンの商標権を有するアメリカの企業に、「ファセオラミンはカロリーを全く気にせず食事を楽しめる」「ファセオラミンはあらゆる食事の後の糖分バランスを改善」旨の広告が誇大広告に当たるとして、FDA(アメリカ食品医薬品局)が警告を出しています。

3.エネルギー代謝の促進

トウガラシに含まれる辛味成分であるカプサイシンがエネルギー代謝を亢進させるという研究がありますが、これも、「無添加」「無農薬」の項目でさんざん述べた「量の問題」があるわけでして、キムチをたくさん食べたくらいで、肉のエネルギーを帳消しには出来ないわけですね。

甲状腺ホルモンが基礎代謝率を高めるということで、牛や豚の甲状腺を乾燥させた粉末が「痩せ薬」として出回っていて、健康被害を起こして問題になった個人輸入の「中国製ダイエット食品」の中にも含まれていました。

命までダイエットしたいですか?

2000年頃から、中国から個人輸入した「ダイエット用健康食品」による健康被害が起き、死者まで出たことから、厚生労働省が注意を呼び掛けています。

厚生労働省:中国製ダイエット用健康食品等関連情報

こういった、国内で正規に販売されていない個人輸入モノでしばしばおこることですが、エフェドリンや甲状腺ホルモンのように、医薬品成分を含んでいるものは、未承認医薬品として薬事法による取り締まりの対象になります。

食べるだけで運動もしないでみるみる健康に痩せられるマジックフーズはないけれども、命まで痩せられる危険な「健康食品」はあるということです。

要は痩身にせよ何にせよ、頭に入れて置いていただきたいところですが、人体に何かしらの活性を持つものは、相応に副作用のリスクもあるということですね。その意味では、空腹を紛らわせる手段にすぎないバナナは無害、それ以上の効果を期待しても無駄だということです。

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