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Q:ゲルマニウムは体に効果があるのですか?

A:「美顔器」の類では、人体に効能をもたらすという根拠はありません。一方、食品として摂取することは危ないと考えられます。

「美顔器付き本」が大売れ

オリコンビューティー&ヘルシー:"美顔器付き"本が総合1位 2週目で実売10万部目前

「純度99.999%ゲルマニウム粉を使用したゲルマニウムボール」のついた美顔ローラーが2980円、書籍の流通で扱われたことから大ヒットしたようです。ゲルマニウムローラー、ゲルマニウムブレスレット、ゲルマニウム温浴など、ゲルマニウムを使っていることを謳う商品は氾濫しているわけですが、そのゲルマニウムに美顔など、なにかしら人体に対する有用な効果があるのでしょうか。

ゲルマニウムに科学的根拠はあるのか

国民生活センターが、ゲルマニウムブレスレットを対象に商品テストを行い、2009年に発表しています。

(強調引用者)

体に良いとうたうゲルマニウム使用のブレスレット

  • 全ての銘柄に、ゲルマニウムが健康に対する何らかの効果を示す旨の表示がみられたが、独立行政法人科学技術振興機構の科学技術文献データベースで検索したところ、科学的根拠を示す文献は確認できなかった。
  • インターネット通信販売業者の多くはゲルマニウムのヒトに対する効果についての科学的根拠を有しておらず、メーカーや仕入れ業者から入手した資料を基に表示を行っていた。
  • テスト対象銘柄に表示されていたゲルマニウムの健康への効果は、文献調査及び製造・販売業者に対するアンケート調査を実施したところ、根拠となる科学的データが確認できなかった。ゲルマニウムブレスレットを購入する人は健康への効果を期待すべきではない。
  • ゲルマニウムのヒトに対する効果に関する表示について、明確な科学的根拠がなければ表示を取りやめるよう要望する。
  • ゲルマニウムの健康への効果について、科学的根拠を示す文献が確認できなかった。景品表示法上問題があるおそれがあるため、監視・指導の徹底を要望する。

つまり、「ゲルマニウムが健康に良い」というエビデンス(科学的根拠)は皆無であり、プラセボ以上の効果は期待出来ず、ニセ科学に分類されるものなのです。

国民生活センターの発表で、ゲルマニウムビジネスは消え去るかと思ったのですが、甘かったようです。

ゲルマニウムは32℃で電子を放出する?

「ゲルマニウムは32℃で、最外殻のマイナス電子を放出する」という言説が、ゲルマニウムグッズの宣伝で頻出します。

(参考)ゲルマニウムと32℃の謎

ニセ科学界隈の怪しげな噂は、たいてい、ネタ元になる論文や研究発表があります。「クラスターの小さい水は健康にいい」説の発端は日本化学会である研究者が行った発表であり、「あるある」や「おもいッきりテレビ」のような「健康情報“娯楽”番組」はある程度論文を読める人がいるプロダクションを使っていて、番組で作ったプロットに無関係な論文を無理やり当てはめるというようなことをやっていたわけです。しかし、「ゲルマニウムは32℃で電子を放出」説、科学者がいくら探してもネタ元を探し出すことは出来なかったというのです。ゲルマニウムの原子番号が32であることから出てきた連想なのでしょうか。商品宣伝の中には、伝言ゲームで変質したか、摂氏ではなく華氏32度(=0℃)になっているものもあるようです。

ごく初期のゲルマニウムグッズは、「生体電流を整える」と喧伝されていたようです。昔、半導体にゲルマニウムが使われていたことからの連想でしょうか。

飲むゲルマニウムは危険ではないか

ブレスレットやローラーは、毒にも薬にもならない気休めに過ぎないわけですが、ゲルマニウムを含んだ、いわゆる「健康食品」に関しては、現時点では危ないとみたほうがいいでしょう。無機ゲルマニウムでは死亡者を含む重篤な健康被害が出ています。

では、有機ゲルマニウムは安全で体にいいのでしょうか。

有機ゲルマニウムで医薬品として用いられているものがあり、B型肝炎治療薬「セロシオン」です。あくまで、それを必要とするほどB型肝炎が悪化している患者に対して医師が処方すべきものであって、有機ゲルマニウムを食品として安易に摂取すべきものではないでしょう。

水商売ウォッチング:有機ゲルマニウム水は危険ではないか

有機ゲルマニウムは、あくまでもそれが必要な程度にB型肝炎が悪化している患者に対し、医師による慎重な観察のもとで投与すべきものである。素人が健康食品代わりに、薬剤として投与すべき量の4倍もの量を気軽に摂取するような代物ではない。

また、免疫賦活作用というのは、病気の治療のためにやむなく行うものであって、セロシオン投与で体にはそれなりに負荷がかかるはずである。その状態を日常ずっと保つことが健康にいいとは考えにくい。

なお、別の業者の宣伝では、有機ゲルマニウムは(GeCH2CH2COOH)2O3とされている。セロシオンは(OH)3GeC2H4COOHである。化合物としては別物だが、セロシオンが持つのと同じ免疫賦活作用を業者版有機ゲルマニウムが持つのだとしたら、副作用の方も同様に考えないと危険なのではないか。

一つ気がかりなのは、業者が主張する「有機ゲルマニウムには副作用がまったくない」の根拠である。いつ、どこのグループが、どんな方法で何を調べたのか、学会発表なのか論文なのか、手掛かりが得られていない。それらしいところを探したのだが、探し方がわるいのか見つからない。

かりに論文が見つかったとしても、「副作用が全くない」という証明は、いわゆる悪魔の証明であり、不可能だろう。すべての条件についてテストすることはできない。既往症によってはまずいことが起きるかもしれない。長期に服用した場合や、他の薬剤との同時投与で何がおきるかまで、そうそう全部押さえられるはずがない。大抵は事故やトラブルが起きて、医療関係者に知れ渡り、注意すべき点がよりいっそうはっきりしてくる。

とにかく、セロシオンと薬理作用がどう違うのか、安全性はどこまで確認されたかが(セロシオン並に)はっきりするまで、手出しをしない方が安全だろう。いや、業者は安全だと主張するだろうけども……。

このサイトでは何度も繰り返し言いますが、人体に対して何かしらの活性を持つものは、副作用のリスクも考えなくては駄目です。薬は、毒にもなり得ます。よい効果だけあって、「副作用は全くない」ということは考えられませんから。

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