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Q:遺伝子組換え作物は危ないのですか?

A:遺伝子組換え技術が実用化されて10年以上経ち、安全性が検証されてきましたが、今のところ、ヒトや家畜に異常をきたしたという報告は、審査のある科学論文には全くないのです。

実は「食べるコラーゲン」と似た話

遺伝子組換え反対論者は、遺伝子組換え技術で作られたタンパク質がアレルギーを引き起こすと主張します。しかし、別項「食べるコラーゲン・食べる酵素は体にいいものですか?」で取り上げたとおり、タンパク質は消化される過程で、アミノ酸に分解されて吸収されます。遺伝子組換えの結果作られたタンパク質にも同じことが言えるわけで、元が組換えであろうが非組換えであろうが、アミノ酸になれば同じアミノ酸です。

ロシア人研究者のアジテーション

遺伝子組換え作物危険説の発端は、2005年、あるNGOのシンポジウムで、ロシア科学アカデミーの研究者、イリーナ・エルマコヴァ氏が、ラットを使った動物実験で遺伝子組換え大豆を食べさせたラットの死亡率が高かったから組替え大豆は危険だ、と主張したことでした。翌年には日本の市民団体に招かれて来日講演を行い、一部のマスメディアで「遺伝子組み換え大豆 子ラット6割死ぬ」などと書き立てられたのです。ところが、この「動物実験」とは実に杜撰なもので、最初に発表した内容によると、「組替え大豆」は生の大豆をすり潰したもの(レクチンなどを含み、生豆自体が有毒)であるのに対し、エルマコヴァ氏が対照群とした「非組み換え大豆」は、大豆そのものではなく、大豆を人間用に加工した食品であるというので、豆中毒にはならないし、大豆そのものとも組成が大きく変わっているわけで、ラットが死んだことが遺伝子組替えのせいだとは言えません。

科学ライターの松永和紀氏が、エルマコヴァ氏の講演後の記者会見でその点を質問すると、「その粉を加熱してあったかどうかは知らない」という答えでした。松永氏は念のため、エルマコヴァ氏のその後の講演行脚にもついて回ったということですが、その後は「いずれも人用の粉なので加熱してある」と、言うことがコロコロ変わったというのです。

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一部生協が煽動

一部の生協が、「遺伝子組み換え」反対キャンペーンを行って来ました。生活クラブ生協やグリーンコープなど、別項で取り上げた、未だに合成洗剤反対キャンペーンを行っている「協同組合せっけん運動連絡会」の構成団体と被っているようです。合成洗剤も、多摩川が泡にまみれていた頃と今とでは変わっているのに、反対ありきという思想で動いている、気味の悪い連中です。そして、日本で、遺伝子組み換え反対のキーパーソンとして活躍している、天笠啓祐氏や安田節子氏の動きも監視しておいた方が良いでしょうね。

「巨大企業の独占」の本当のところ

反遺伝子組換え論者がよく言うのが、遺伝子組換え技術を独占しているとされるモンサント社の陰謀だとする説です。これを、松永和紀著『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』では次のように喝破しています。

反対派はよく、「多国籍企業にしか開発できず、世界の食料が一部の企業に牛耳られてしまう」と批判する。それは事実だ。実際には、植物を遺伝子組換えする技術自体は、ごく簡単な施設で安価にできるありふれた手法。しかし、「不自然だから、何かが起きるかも」と感じる市民の不安を解消するために、厳しい安全性評価試験が課されている。その結果、組換え作物の開発や審査の申請には多額の費用が必要になり、巨大な多国籍企業や公的機関しか手を出せなくなった。

日本でも当初、民間企業が開発に参入したが、「採算が合わない」という理由で多くは撤退した。万全の安全を求めるがゆえに、一部企業や公的機関の独占を招くという結果になっていることも、知っておく必要がある。(p185)

皮肉なことですが、「安心」を求める消費者心理、そして、不安を煽る市民運動が、結果的に「巨大企業の独占」を招いているのです。

遺伝子組換え大豆に関するパブコメ募集

現在(2010年1月18日)、農林水産省が、「遺伝子組換えダイズの第一種使用等に関する承認に先立っての意見・情報の募集について」に関するパブリックコメントを募集しています。これに対して、NPO「アジア太平洋センター」が、WEBサイトにパブコメ送付用のフォームを設けています。しかし、この「運動」に、疑念の声が上がっています。

遺伝子組換えダイズにまつわるエトセトラ #GMOj

遺伝子組換えダイズのパブコメ募集について考える

遺伝子組換えダイズのパブリックコメントへ意見を出す前に(食の安全情報blog)

この種の“善意の運動”、チェーン行為的に広まることも多々あるのですが、パブリックコメントは確かに市民が行政に物申す機会ではあるけれど、多数決ではないのです。NPOやNGOが「フォーム」を作って、肝心の行政側が用意している一次資料さえ見られない状態で、金太郎飴のように反対反対と送ったところで、何にもならないのです。

遺伝子組換えダイズのパブコメ募集について考える

今回のパブコメ募集の趣旨は、これらの遺伝子組換え作物の「優位性」「有害性」「交雑性」について検討してきたその結果についてみなさんに読んでもらい、検討結果から隔離ほ場あるいは一般ほ場で栽培するにあたって問題点・不鮮明な点、改善点などについて広く意見を募集しますよ、ということです。
遺伝子組換え作物の是非などは訊かれてはいないのです。
モンサントがどうのこうのというコメントがいかに見当違いか、おわかりいただけるでしょうか。今回の品種はモンサント社とは一切関係がありません。

パブリックコメントは何のためにあるのか

ただしパブリックコメントで求められているのはあくまで他人を納得させられる合理的意見であって、人気投票や世論調査ではないことは認識しておいたほうが良いと思います。日本でも時々大量の同じ意見を出そうと誘導する団体が、意見はこう書こうなどといったようなテンプレートを準備して一般の人に呼びかけるような運動をすることがありますが、同じ意見は何通出しても1つの意見でしかありません。逆にそのような呼びかけをする団体は、効果のないことを一般の人に要請し、事務処理の手間を増やすことで税金の無駄遣いをさせている、あまり志の高くない団体であると認識されるでしょう。

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